イギリスの大学院のいわゆる「オムニバス授業」で、ビザンチンのロマンス(物語文学)を読む回がありました。その時配布されたプリントがこちらです。作品の英訳(序論つき)です。Eumathios Makrembolitesという人が書いたThe Adventures of Hysmine and Hysminiasという作品で、Hysminiasが男性、Hysmineが女性の名前です。12世紀コンスタンティノープルで生まれた作品とのこと。
これについて、恥ずかしいですが当時の日記から抜粋しますと(※さすがに一部手を加えてあります。(笑))
体裁といい厚みといい何だか修士論文みたいだなあ。しかし読み始めてみると、さっきの文献読みの苦痛はどこへやら、眠気もどこへやら、ぐいぐい読み進んでいった。愛の神をおろそかにしたら早速射られて恋におち、駆け落ちを試みたら船が難破しかかり別れ別れ、1年ぐらいたってからお互い奴隷の身で再会、しかし主人夫婦の女性にも好かれちゃったりして・・・と何だかベタながらも面白い。美しい描写にきわどい夢(笑)。男性主人公が恋に落ちた後は、一緒にお風呂に入ってる夢なんか見ちゃったり。
長年刊行を願っていたおもしろい作品が出版されたのですから私としてはもう大喜びで、早速欲しいと思い購入しましたが、それにしてもペーパーバック版でも高額で、これほど思い入れが無かったら買わないという値段でした・・・。ざっと見た限り日本の大学図書館には無いようでしたが、後輩たちにも見て欲しいと勝手に考え、図書館に購入希望を出してみたところ、前回同様あっさりOKが出ました。
まあ、長年借りられないままになってしまいそうな気もしますが。それは勿体ないので微力ながら宣伝しておきます。(笑)
ビザンチン帝国のギリシア語の文学作品など、そもそも知る機会もあまり無いと思いますし、原典を読むのも困難ですから、英訳の存在は貴重です。
留学先では中世研究となるとビザンチンのことは至極普通に出てきて、ビザンチンの専攻もあり、ギリシア人の先生もいらっしゃいましたが、日本の中世英文学研究においてビザンチンものが引き合いに出されることは僅かであるように思います。
もちろん中世ビザンチンのギリシア語という言葉の壁も大きいと思いますが、このような英訳を用いてでも、一寸見てみると何か意外な繋がりや発見があるのではないかと思っています。同じく留学先で読んだビザンチンの年代記も興味深かったですし、もっとビザンチンに注目してみようと以前から考えています。ギリシア語は全く知りませんが・・・
また、本書の表題は「Novels」になっていますが、近代小説の萌芽的な読み方も出来るのかもしれませんね。
実は私のオーダーしたものはまだ届いていないので、これ以上のことは何も書けないのですが、少なくともリサーチに関係なく通常の読書の対象としておすすめです。他の3作品も是非読んでみたいですね。
補足情報:イギリスでの授業では、このHysmine and HysminiasとクレチアンのCligèsとをバフチーンを用いて読み解くというものだったのですが、オムニバス授業取りまとめ役の先生がHysmine and Hysminiasの作品プリントを配布した以外は予習リストを前日夜まで送信し忘れていたため、当然リーディング課題を一切こなせていないまま授業に出ることになってしまい、発言などできるわけもなくとにかくノートを取った、という回になりました。

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