2014/04/13

Richard, Coeur de Lion校訂版

今週より新学期が始まりました。昨年と一切変わらない時間割です。市内生活から一転、60キロも70キロも通勤してなかなかの筋力トレーニングになりました。


前々回の記事にロマンスRichard, Coeur de Lionを読んだと書きましたが、前にこのブログでもご紹介したヨーク大学のDatabase of Middle English Romanceによれば写本から起こしたフルバージョンの校訂版はどうやらMetrical Romances of the Thirteenth, Fourteenth, and Fifteenth Centuriesしか無いようで(あまり徹底的に調べていませんが、少なくともEETSやTEAMSには無く)、これがかなり古い書籍でした。

探してみると、うちの大学図書館に普通にありました!しかし準貴重書扱いで特殊書庫に入っており、教員のみ2週間だけ貸出可であるものの、コピーは不可という決まりでした。

複写できず、貸出期間も短い為、期間中に読み切れないかもしれない・書き込みや蛍光ペン引きが出来ない・付箋も不可、更に長く手元に置いておけない、繰り返し参照できないということになります。(何度も何度も借りるのも何ですし・・・)

そうなれば実物を古書市場で探して入手するほかありません。海外の図書館で本書を貴重書扱いにしていない所を探して複写を依頼するという手もないではありませんが。
ただ、本格的に研究対象にするというよりとにかくお話だけ把握しておきたいだけだったうえ、現時点で論文の典拠にする訳でもないため、とにかくストーリーだけは先に読んでおこうとGoogle Booksから丸ごとダウンロードしてひとまず読みました。

しかし、Google Booksは指がスキャンされていることもあるような、どうにもイマイチな代物です。今回、指はありませんでしたが(笑)染みだらけでした。まあこれはGoogleのせいではなく、書籍本体の状態が悪いせいでしょうけれども

 しかもどなたかの「mace」という書き込み入り。
 
まあこんな状態で読めない箇所が多く、さらに見開き(つまり2ページ相当)抜けている箇所まであったため、改めて探してもっときれいな物を発見してDLし直しました。

とにかくさしあたりはこれで読んでストーリーを頭に入れ、注目すべき箇所をハイライトしたうえで、学期が始まったついでにやっと実物を確認しに図書館へ行きました。

先程書いたように教職員のみ2週間だけ借り出せるので、自宅に持ち帰りました。EETSの校訂版にも時々1800年代の物はあるし、それだってただ古いだけで傷んでもいないし通常の書架にオープンに置かれているのに、なぜ19世紀出版とはいえこれは準貴重書に分類されているのだろう?と思っていたのですが、実物を見て納得しました。


触れる物触れる物みな茶色くなってしまうので、ビニールにくるんでしまいました。お陰で装丁が分かりにくいですが、いかにも欧米の古めかしい書斎の本棚に置かれていそうな雰囲気の装丁で、表紙も取れてしまいそうです。ああこれは確かに準貴重書扱いにせねばならない、コピー機にかけるわけにもいかない、と納得しました。
中身も状態が悪く汚れていたり判読しにくい箇所があったりするかもしれないと覚悟していましたが意外ときれいでよかったです。

さて、複写禁止である旨先生にお伝えすると「スキャンですね!」と仰いましたが我が家のスキャナーは生憎カラープリンタ兼の普通の物。つまり、上から撮影するような感じでスキャンする物ではなく、透明なガラス面に紙面をあててスキャンする物なので、コピー機と同じような感じになってしまいます。さらに上に書いたように、接触する物が茶色くなってしまうような状況なので、スキャナーもかなり汚してしまうでしょう。(スキャナーは自分の物ではありません)
ともかくコピー機と同じダメージを与えるわけにはいかないので、仕方なく慎重に撮影することにしました。デジタル化プロジェクトです。(笑)貴重書の扱い方を授業で習っておいて良かったです。
著作権は切れているので必要な所は全部撮影しました。作品は意外と1時間ちょっとで撮影出来てしまいましたが、どうもその後数日間クオリティに納得がいかず、撮り直したりしてやっと完成(?)です。
デジタル化プロジェクトでは一頁一頁撮ると思いますが、片手で本をおさえ片手でカメラを構える個人作業の上、カメラを縦に構えるとますますぶれるので、見開き毎に撮影しました。あまりぎゅうぎゅうと押し開く訳にもいかないので、レンズと左右それぞれの頁との距離が一定でなく、必然的に隅から隅までピントを合わせることは難しくなり、ぼやけてしまったりして少し大変でしたが、最終的にはまあまあの画像ができました。

きれいなバージョンのGoogle Booksでも字が潰れ気味な箇所が散見されましたが


実物を撮ってみると


古い本なので、実物も印刷が読みにくいのかなと思っていましたが、思った以上にくっきりした印字だったんですね。

さて、何度も実物を確認し、写真にも残しましたので、これで本格的に研究資料として使い始めることができます。
この物語は現在ロマンス即ち物語文学に分類されているとはいえ、実際の歴史と合致する部分も多く、現代人の認識ですら史実に近いと感じられるぐらいなのですから、中世当時であればもはや歴史叙述と何ら変わらないように感じられたのではないでしょうか。寧ろ年代記の方が余程虚構のようであるかもしれません。

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