2012/09/22

博士論文執筆の所要時間

理系では博士課程の3年間、又はせいぜい4年間程度で博士号が取得でき、一方文系では6年間かかるのも、或いはそもそも博士論文を書かないのも当たり前。小学校の同級生のAさんが理系の博士ですが、やはり普通に修士号の3年後に学位取得していました。しかしなぜこのような違いが出るのかという事を、全く大学院に関係のない人に説明するのは難しいことです。或る方に、博士論文を書かないで終わるのも別に普通のこと、と言ったらとても不思議そうな顔をされてしまいました。

特に少し前の世代だと、博士論文を書かないのは今以上に当たり前。文学で博士号は出ない、というような状況でした。

それが今は、うちの大学院の英文学、米文学専攻の場合ならば「書くのが当たり前」になり、「書かないのが当たり前」だった言語学専攻すらも書く方向性になったようです。

それでもやはり、早い人でも5年間かかっており、大抵6年以上かかって博士論文を出します。なぜそんなにかかるかといえば、まずテーマを決めるだけで大変な事。研究対象は文学作品という既存のモノであり、新発見が相次ぐ分野ではありません。対象が既に決まっているのだから、研究もかなりし尽くされており、その中で独創性ある、研究に新たな視座を提供する研究テーマを模索するのはそれだけで大変なことです。いいトピックを思いついたと思っても、既に他の人がやっています。勿論、誰も耳にしたことのないテーマを考えねばならない訳ではなく、テーマ自体が一緒でも、結論やアプローチが異なれば良いのですが。

そして文学研究は、作品及び研究書を沢山読んだ上に成り立つものです。つまり英文科の場合、英語で書かれた作品、研究書、論文を多数読まなければ論文は書けません。英語で大量のリーディングをするのですから、日本語以上に時間がかかります。

更に、まずは博士課程があります。博士課程に入学したらすぐさま博士論文に取り組み始める訳ではありません。修了必要単位というものがありますから授業を履修しますし、留学もします。私の母校では、博士課程の3年間は基礎訓練を積む期間とされており、博士論文を執筆する期間とは位置付けられていません。博士課程で沢山の授業を履修し、学会発表を行い、留学も行い、訓練を積んだ上で、それから論文を書くのです。授業を履修している間は予習でいっぱいいっぱいでリサーチはあまりできませんから、これが時間をくう理由の一つでもあります。

しかし、5年以下で博士論文を提出するのは無理なのかといえば、そうとも限りません。私の場合、博士課程初期の燃え尽きで肝心の長期休暇中にもリサーチができず、また、悔いなく生きる為に読まねばならない本より先に読みたい本を読んだりしました。こうして研究が遅れに遅れたにも関わらず、6年で出せた(=課程博士の制度に間に合った)ので、もしも順風満帆ならば、そして研究だけに集中すれば、文学であっても3、4年で出すことはできるのではないかと。

そう考えると、もっと早く完成できたはず、、、と何だか悔やまれますが、一方で年齢に助けられたのも事実。
博士論文に取り組んでいる時、勿論かなり悩みましたし、間に合うのだろうかと焦ったりもしましたが、それでも修士論文の時よりも精神的苦痛・焦燥は小さいものでした。まあ何とかなるものだと大きく構えていられたのも年齢のおかげで、博士論文提出が迫る昨秋~冬には良い意味で30歳という年齢を意識することが多かったです。30代だからどっしり構えていられた。これが22歳とかだったら出来なかったと思います(って、博士課程が終わるのが27歳なので矛盾した言い方ですが)。

口頭試問も終わった今、改めて博士論文や博士課程全体のことを振り返ることが多いのですが、博士課程以降の研究の道は順風満帆からはほど遠かった。多くの時間を無駄にしてしまった。テーマ設定もちょっと良くないまま進んでしまった。それでも6年以内に論文を形にできた。そういう経験から、いま博士論文に向けてうまくいかなくて凹んでいる人がいたら私の例を励みにしてもらえたらと思います。

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