2012/03/20

作品集の文脈

前回の続きです。

現代の本ではいろいろな文学作品をまとめて一冊にしたものがありますが、中世ヨーロッパの場合、作者不詳というケースも多いため、例えば「オスカー・ワイルド作品集」のような体裁をとるよりも、中世英国ロマンス集、とか韻文ロマンス集、といったように地域や言語・文体、テーマによってまとめた物が多くなります。

例えばミシガン大学のTEAMSは中世英語を特に学んでいなくても普通に学生が読めるようにという意図で読みやすい中世文学作品のエディションを色々出していますが、いくつかの作品をまとめた場合に「イングランドのロマンス」「センチメンタル&ユーモラスなロマンス」など全体の表題を見るとその本がどのような方針でまとめられたのかがわかります。
さらに現代の本は中世写本と違って編者も出版社も出版年も書いてあり、まえがきもしっかりあるので、どのような方針で編まれた本なのかよりはっきりとわかります。
どういう理由でこれらの作品を一冊に入れようと思ったのか、ということは現代の研究者がそれらの作品をどう捉えているのかということにもつながります。

一方、写本の内容をそのまま本にしたものもあり(ファクシミリ版は除き)、エクセター大学出版のPoems of the Pearl MSなどがその一例です。一冊の写本に入っていて、同一作者かもと考えられている四作品をそのまま活字化しています。これはこれで、手軽に写本一冊分を追うことができて、普通の本を読みながら写本の文脈を意識することができて良いです。

また、こんな本もあります


これは、中世に各国語バージョンで流布した物語のうち、ラテン語のものや古仏語のものなどいくつかのバージョンをまとめたスペイン語書籍です。
中世当時においても前回述べた写本の文脈において興味深い作品ですが、この本(2010年刊)の文脈自体も興味深いです。なぜ数あるバージョンの中からこれらを本書に入れようと考えたのか。本文が西語なのでその辺りは判りませんでした・・・

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