2011/05/10

Laurent de Premierfait

Laurent de Premierfait (c. 1365−1418)という人について今リサーチをしています。フランス語履修者には何とも覚えやすい名前のこの人は、自らラテン語詩を作るだけでなくボッカチオやキケロの著作をフランス語に訳したことで知られています。ボッカチオのDe casibusの初の仏訳を1400年に行ったほか、デカメロンの翻訳も1414年に行いました。後者は、『ベリー公のいとも美わしき時祷書』『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』で知られるベリー公に献呈されています。但し、イタリア語原典からの翻訳ではなく、ラテン語訳からの重訳だということです。ベリー公の為にはDe casibusの新たな訳を1409年に作っています。

キケロについては『老年について』を1405年に、『友情について』を1416年に仏訳し、作業はブルボン公ルイの為になされました。
また、アリストテレスのEconomicsもラテン語からの重訳で仏語にしています(1418年)。

このように自国語への翻訳を作ることによって、より広く作品が普及することが期待できますから、過去の作品の受容という問題において翻訳は注目すべき問題です。しかしここで注意しなければならないのは、私たちが今考える「翻訳」とは必ずしも同じものではないということです。Laurentも例えば地名が出てくると、どこそこの町だとか補足的説明をどんどん加えて訳したようで、人名地名の解説や同著者他作品への言及など色々盛り込んだ結果、1409年版のDe casibusは原典の3倍ほどの長さになったそうです。デカメロンの訳にも改変が施されているようです。そこで興味深いのは、Laurent自身が翻訳の方針を前書きにおいて言明していることです。たんに当時の翻訳の概念が現代と異なったというだけではなく、彼自身も自分なりのポリシーを持って訳業に臨んでいたというわけです。ラテン語がわからない人たちに向けて作品の何を伝えたかったのか。そこに訳者の個性が出ているのかもしれません。

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